コーペラティブマーケティングの概要

コーペラティブマーケティング(cooperative marketing)とは、同業者が集まり、協業的に行うマーケティングの手法です。その中でも特にSEO対策として協力しながら検索上位を目指す手法をコーペラティブSEO(cooperative seo)と呼びます。

コーペラティブマーケティング(cooperative marketing)は、様々な業界で見られる、わずか1、2社による独占状態を改善し、中小企業や個人事業主が活躍できる機会を与える最新で最善の施策です。

コーペラティブマーケティングが生まれた背景

ネット社会以前の消費者の行動

「勝ち組、負け組」という言葉が頻繁に使われるようになったのは今から10年以上前ではないかと思います。

様々な業界で起こった儲ける企業とそうでない企業。その差は一体なんだったのでしょうか?これには様々な理由が考えられますが、大きな要因はネット社会の到来だったと言えます。

ネット社会以前の企業の広告活動と言えば、新聞広告や雑誌広告、ポスティングなどのアナログ媒体が主流でした。

旅行へ出かけるにも、以前は近くの旅行会社の窓口へ出かけて店員さんと相談し、旅行雑誌片手に旅先を歩いたものです。旅行雑誌に掲載されていた「美味しい店」が実は広告だったと知るのはだいぶ後の話しですが、いずれにしても情報収集の手段は限られていました。

塗装業者を探すのにも、NTTから定期的に家庭に送られて来る電話帳で探しました。

アナログ媒体には企業の一方的なセールス内容しか書かれていませんし、電話帳には住所と電話番号としか載っていません。

クチコミはまさに身近な人から「クチコミ」しかなく、見ず知らずの人たちのクチコミを知る機会はほとんど有りませんでした。

そのような時代にあっては、どのような業種でも比較的満遍なく人(消費者)が流れていました。現在のようにほんの一部の事業者にだけ極端に人が流れるような時代ではなかったのです。

検索エンジンによる消費者行動の変化

90年代中頃から2000年頃にかけてはホームページを持つ事業者が増えだしました。実はホームページという仕組みが世の中に出始めたころは、積極的にホームページを作っていたのは中小企業や個人事業が多く、大企業ほどホームページを作るのが遅かったように思います。この時代はあるいみ中小企業や小規模事業者にとってはチャンスで、実際その頃にホームページを作ったことで大企業に発展した事業者も少なくありません。

そしてホームページを持つ事業者が増えたことに目を付けて、それらのホームページの情報収集をしてネット上に公開する事業者が出てきました。検索エンジンの出現です。

検索エンジンが使われるようになり、それまでアナログ媒体でしか情報収集できなかった時代から、デジタルな世界で情報収集ができるようになってきました。
当初は今のように自動的に検索エンジンに登録されていたわけではなく、人が情報収集して登録していましたが、そのうち自動的に情報収集して登録されるような仕組みに変わってきました。

検索エンジンの出現によって、事業者のホームページが多くの人の目に触れるようになり、「検索順位」という順位付けがされるようになりました。

整体院を探すのにも、NTTの電話帳で探すのではなく、検索して自分にあったところを探すようになりました。ホームページには電話帳と違って多くの情報が掲載されていますから、消費者としてはより自分にあった事業者を選ぶことができるようになりました。

そして検索順位が上の方にある事業者と、下の方、特に2ページ目、3ページ目以降にしか掲載されない事業者とでは集客に大きな差が出るようになりました。この頃には事業者間の情報格差も大きくなりはじめ、検索で上位に表示させるSEO対策に取り組みんで集客にも成功した事業者と、ただホームページを持つだけで対策をしていなかったり、あるいは間違った対策をしてなかなか上位に表示されない事業者とでは大きな差がつくようになりました。

検索で上位に表示されるようになった事業者は資金にも余裕が生まれれるようになり、その分をネット広告にも費やすことができ、そうでない事業者と益々格差が広がるようになりました。

Googleの劣化か呪縛か?

SEO、検索順位の世界でいうと、古い事業者や大手の事業者が上位をしめ、新しい事業者がそこに割って入るのはかなり困難な時代になってきました。

良くも悪くも私たちはGoogleに支配されていて、検索の世界はもちろん、GoogleマップやGoogleのクチコミに見られるように、私たちの行動の大半をGoogleに情報として提供しています。

Googleの立ち位置を「メディア」と表現して良いのかどうかわかりませんが、例えば新聞や雑誌などのメディアでは「新しい情報」を取り上げるものです。

地域情報誌なら「所沢に新しいパン屋ができました!」という情報は貴重な情報ですし、読む側の興味関心も大きいものです。

しかしGoogleは違うのです。残念ながら、新しい事業者のホームページはかなり不利で、上位表示はおろか長期にわたり「圏外」というケースも珍しくありません。※1

SEOに昔から関わっている人の中には「Googleは劣化している」という人もいますし、Googleの社会的責任が増した結果、その「呪縛」にとらわれているという意見を聞いたこともあります。

Googleは日々様々なプログラムの改変を行っており、どんどん賢くなっているはずなのですが、何に対して改変しているのか?疑問に思う事が多々あります。Googleは本当に賢くなっているのでしょうか?ただ、それを言ってもGoogleに支配されている私たちは抵抗のしようもありません。残念ながら私たちにできることはGoogleの考えを理解し、Googleに気に入ってもらえるよう努力するしかないのです。

人工知能が発達し、未来では人間がロボットに支配される

というような話は昔から良く聞きますが、実は私たちはすでにロボットに支配されているのです。

ますます複雑になった近年のネット事情

SEO対策は、それが認識され始めた頃にいち早く取り組んだ事業者は簡単に上位に表示され、集客も売上も右肩上がりで、その上がり方も垂直に近い断崖絶壁のような上がり方だった事業者も少なくありませんでした。

その後、徐々に検索エンジンにも改良が加えられ、過度なSEOには順位を下げるなどのペナルティを与えるようになり、そこから検索エンジンとSEO対策をする側との戦いが始まりました。それでも検索エンジンとSEO対策をする側との1対1の戦いでしたので、小規模事業者でもまだまだ上位に表示される余地は多い時代でした。

しかし、近年は検索エンジンは益々アップデートされ、賢くなりました。さらにデジタルな世界での集客も検索エンジン対SEO対策者という1対1の構造でなく、X(旧Twitter)やFacebook、Instagram、TikTokなどのSNS、YouTubeなどの動画、インフルエンサーマーケティングなど様々なチャネルに向き合わなくてはならない時代になってきました。

小規模事業者がそれらすべてに向き合うのは現実的ではなく、もはや小規模事業者、特に新しくビジネスを始めようとするような事業者にとってネットでの集客は益々ハードルが高くなってきています。

集中することは社会にとっても消費者にとってもマイナス

一部の事業者に顧客が集中してしまう現状は日本の社会にとっても消費者にとっても必ずしもプラスになりません。
それが本当に品質やサービスの質だけで選ばれているのなら良いですが、前述の通りGoogleが決めた基準でコントロールされている側面がありますし、SEO対策で上位に表示されていることと、良い品質やサービスは別です。

さらに、これも前述していますが、新しい事業者ほど検索順位が上がらずに目立つことができず、古くからやっている事業者は何もしなくても上位に表示されている現状は新規参入への多きなハードルとなっています。

新規参入はそもそも売上が無いところからスタートしていて、利益が出るまではずっとマイナス経営が続きます。政府がいくら新規参入を奨励しても、このGoogleに支配された検索の世界のままでは不利なままです。

そのような状況を何とか打破したいと考えたのがコーペラティブマーケティングです。

コーペラティブマーケティングの提唱

水平に繋がることで限界を超える

小規模事業者がSEOやSNS、YouTubeなど効果的なチャネルすべてに向き合うのは無理がありますし、投下できる資金や労力には限界があります。その限界を超えるのが水平に繋がること、つまり同業他社との繋がりです。

なぜ同業者と繋がることが良いのか?

同業者との繋がりは消費者に良い印象を与える

例えばカフェのオーナーさんが、

「隣町のカフェ○○さんに行ってきました!とても美味しかったです!!」なんていう投稿をInstagramにあげていたらどう思いますか?

それってとても斬新に感じますし、どちらのカフェにも良い印象を持ちますよね?

歯科医院はどうでしょうか?歯科医院の院長さんも歯の治療はされるはずですが、自分で自分の歯の治療はできないでしょうから、どこか他の歯医者さんに通われているのではないでしょうか?もちろん、自院で雇用している歯科医や非常勤の歯科医に診てもらっているケースもあると思いますが、他の歯科医院に通っている方もいらっしゃるのでは?
であれば、自身が通っている他の医院を紹介したり、逆に紹介してもらったりすることでお互いにメリットがあります。
また、歯の治療をしたくて検索している人にはその情報はどのように見えるでしょうか?
「歯科医院の院長さんが通っているくらいだから信頼できる」そう考えませんか?

「いや、そんなことをしたら他の歯科医に患者を取られるだけで何のメリットもない」普通はそうお考えになると思います。これについては後程記載します。

最も信頼できる情報

GoogleにはE-E-A-Tと呼ばれる独自の評価基準のようなものがあります。Googleが検索順位を決める際の基準にしたり、参考にしたりする指標の一つですが、このE-E-A-Tは主に権威性や信頼性を現わす基準です。詳細は割愛しますが、Googleからみて信頼できる情報かどうかの指標になりますので、SEO対策上もこの指標を高める必要があります。

このE-E-A-Tを考える時に、同業者の情報は間違いなくGoogle基準に合致するはずです。

自分で言うより他者に言ってもらった方が効果的

ケーキ屋さんが、

「うちのケーキは絶品です」と自分で言うのと、

「あそこのケーキは本当に美味しい」と他のケーキ屋さんのスタッフが言うのとどちらが効果的でしょうか?

間違いなく後者ですよね。同業者が絶賛しているのですから、

もう一つの大きなメリット 紹介サイトからの脱却

2010年頃からでしょうか。事業者の情報を集約して紹介するホームページがあり、そこから事業者に問合せがあった際には紹介料として事業者から料金を取るというビジネスが出てきました。
あるいは、「お勧めの事業者5選」のようなページも良く見ますが、これも掲載されている事業者が掲載料を払っているケースが多いです。

お付き合いのある事業者様から、その手数料負担が大きいので何とかならないかと、よくご相談を受けました。

残念ながら、このような紹介料や掲載料を取る事業者はSEO対策をしっかり行っていますから検索順位は上位ですし、検索する人たちも「プロがお勧めする事業者〇選」のようなページを広告だとは認識していないので(現在は法改正により広告であると明示していますが)、信頼できる情報だと思ってしまいます。

コーペラティブマーケティングは、このような手数料負担の大きな集約サイトから脱却できる可能性を秘めています。

コーペラティブマーケティングの適用範囲とリスク

コーペラティブマーケティングの適用範囲

ここまで読んでいただき、読者によっては

「うちの業界では無理では?」と思われた方もいらっしゃると思います。

その考えは間違いではないかも知れません。コーペラティブマーケティングはすべての業種で活用できる手法ではありません。

主に実店舗をもったローカルビジネスがその適用範囲になります。

ナショナルブランドをメインに扱っている通販業者間ではメリットを享受できないかもしれません(しかし協業することは別の領域でメリットがあります)。オリジナルブランドや自社製品を扱っている通販業者間なら適用できます。

コーペラティブマーケティングのリスク

SEOの観点から見ると、コーペラティブマーケティングにはあるリスクがあります。それは、Googleのガイドラインに違反する可能性があるということです。
以前、「リンクファーム」というSEOの手法がありました。リンクファームは、Googleが否定している手法の一つです。

リンクファームについて詳しくはこちらをご参照ください。

SEO対策では今も昔もリンクを獲得することが大事なのですが、リンクファームが流行った時代はとにかくリンクを獲得するために、事業者同士が集団になってリンクを張り合ったのです。これに気付いたGoogleは対策をし、そのような行為を行ってリンクを張り合ったホームページの順位を落としたのです。

コーペラティブマーケティングはSEO効果も期待していますし、コーペラティブSEOはまさにSEO対策を狙った施策ですが、リンクファームとはまったく違いますのでご安心ください。

ただ、いくら同業者同士で水平協力できる体制を作ったとしても、下手なことをするとリンクファームとみなされてペナルティを受けてしまいますので注意が必要です。

コーペラティブマーケティングはあくまで中小企業や個人事業主、そして起業したての事業者がコストをかけずに早期に収益化できるよう、そして消費者にとっても本当に信頼できる情報を提供することにフォーカスしたマーケティング手法です。

最後にコーペラティブマーケティングで最も重要なポイント3つ

1.消費者を欺くような情報は厳禁

コーペラティブマーケティングでは、中小企業や個人事業主がコストをかけずに効果的に宣伝活動を行える場を作っていくものです。前述のように、自分で宣伝するより同業者に宣伝してもらった方が効果的なので、そのような環境作りをしていくことがコーペラティブマーケティングなのですが、間違ってはいけない点が一つあります。

それは、消費者を欺くような行為は決して行ってはいけないということです。そんなことをしてしまえば、業界全体が信用を失ってしまうことになります。

先のケーキ屋さんの話で言えば、美味しいと思ってもいないのに「美味しい」というのは間違いです。そしてもっと具体的に、そのケーキ屋さんのどのケーキが美味しいのか、プロの目からみてどこが良いのかを消費者にわかりやすく、正直に伝える必要があります。

2.主体は事業者

コーペラティブマーケティングの主体はあくまで事業者であり、施策を行うのも事業者が主体となって行うべきです。

コーペラティブマーケティングを実行するためには、ホームページ制作業者やマーケティング業者の協力も必要ですが、絶対にまる投げしてはいけません。そんなことをしてしまっては、結局前述した高額な手数料負担をするのと同じことになってしまいます。

コーペラティブマーケティングを実践するには、同業者同士が水平的につながり、しっかりとした運営体制を作って主体的に運営することが重要です。

3.事業者間での信頼関係が大切

同業他社は競合他社でもあります。ライバルです。コーペラティブマーケティングが実店舗をもつローカルビジネスが主な適用範囲と前述しましたが、そもそも同じ商圏範囲で他社を宣伝するのには無理があります。
また、無作為にあちこちで他社を宣伝していても逆に信頼を失ってしまいます。

どの事業者でもウェルカムというよりは、ある程度限定された中で協力し合い、信頼関係を築いた方がうまくいきます。

また事業者同士が主体となって運営しますが、それにはその事業者ではない第三者的な存在も必要です。

※1 すべての検索であてはまる訳ではありません。